血がつながった親子こそ コーチング的関わりは難しい
年明けから週3ペースで図書館に行っているのだが、同じように毎日朝から勉強をしている親子がいる。
恐らく今年中学受験をする、小6男児なのだろう。
熱心そうなお父様が隣で仕事をしながら付き添っている様子に、こちらも思わず応援したくなる。
定期的に休憩を挟んで外で軽い運動をするなど、タイムマネージメントやストレス管理も万全。
そっと聞き耳を立てると「なぜ合格したいのか?」「入学したら、どんな生活が待っているのか?」など、目の前の事だけでなく、少し先の未来をフォーカスした会話をしていた。
私も小学生と中学生の娘がいるが、我が子の勉強をみるのは本当に難しいことだと思う。
最初は穏やかに対応できても、近しい人であればあるほど次第にイライラし、ネガティブな感情をストレートにぶつけがちだからだ。
適度な距離感で見守り、時に気持ちを盛り上げるような声がけをするお父様の、素晴らしいコーチぶりには感心した。
こんなお父様がいたら、激戦と言われる首都圏の中学受験もきっと心強いだろう。
蘇る 自分の中学受験時代

ふと30年以上も前の、自分の中学受験のことを思い出した。
今ほど激戦ではなかったものの、12歳の子どもにとって初めての大きな試練。
それなりに自覚をしていたのか、試験前3ヶ月は朝5:30に起きて勉強していた。
図書館のお父様とは違い、私は父に受験勉強に付き合ってもらった記憶はない。
勉強好きな父なので、もちろん質問すればなんでも教えてくれたが、昭和の時代は父親が積極的に育児に参加する雰囲気ではなかったのだろう。
塾の送迎や、お弁当作り、学校見学など、受験に関わる細やかなサポートはほぼ母がやり、支えてくれていた。
ただ一つ、入試直前の私を大きく後押ししてくれた父の言動がある。
それは父が朝、私を起こしてくれた時の事だ。
寒い冬の朝、いつものように「朝だぞ」と声を掛け、さっと私の部屋の東側の窓を開けた父がこう言った。
「陽子、明けの明星がきれいだよ。見てみなさい。」

日の出前に東の空に明るく光る金星、明けの明星。
理科のテキストでもちろん知っていたが、実際に目にしてその美しさに目を奪われた。
深い藍色から淡い藤色へ、自然が織りなす荘厳なグラデーション。
その中でひときわ鋭く、澄んだ光を放つ金星の力強さに、子どもながらに自分の未来や希望を見出したのだろうか。
以降、金星を見る事で早起きへのモチベーションが上がった。
朝勉強の積み上げが功を奏したかは定かではないが、無事合格をすることができたので、これも父のおかげなのかもしれない。
蛇足だが、実際の入学試験において「明けの明星」についての問題が出たことも驚きであった。
その問題は自信を持って回答できたこともあり、父には感謝している。
DoingかBeingか?

コーチとしてクライアントに向き合う時「どんな問いを立てようか」「どんなフィードバックをしようか」などとつい、自分の「言動」=Doingにフォーカスしそうになることがある。
もちろん言葉は大切だ。でも、「相手の可能性を信じて引き出す」「目標達成をサポートする」という目的を果たせるならば、もしかしたら多くの「言葉」は必要なく、むしろ「在り方」=Beingの方が大切なのかもしれない。
私の父がどんな意図を持って、朝私を起こしてくれていたのかは分からない。
ただ親になった今になると、「言動」ではなく「在り方」で私を支え、励まし、力付けてくれていたのかもしれないなあと、当時を振り返りしみじみと感じている。
これから中学・高校・大学は、本格的な受験シーズンを迎える。
どうぞ多くの親が、名コーチになり、お子様のポテンシャルを引き出すサポートができるよう、切に願っている。
全ての親子が幸せな受験をできますように。