私は長年、運動指導の仕事しています。最近は特に、高齢者対象の運動教室に力を入れていて、高齢者の元気をサポートしたい!の想いを胸に活動を行っています。

一口に高齢者と言っても、運動経験・体力・身体機能など個人差も大きく、同じことをしていても、キツイと感じる方、余裕がある方、様々な反応が返ってきます。「自分はできているのか?」「周りに迷惑をかけていないか?」を気にされる方も多く、上手くいかないことで自信を失くされてしまう方もいらっしゃいます。

そんな方々が安心して教室に参加され、運動を継続できるよう、私たち運動指導者は、日々、様々な声掛けを行っています。

「よくできてますよー」  「頑張ってますね!」

「イイ感じ!」  「素晴らしいですね!!」

できていること、やろうとして頑張っていることを言葉にして褒める・・・コーチングを学び始めて、日々行っている声掛けが「承認」であることに初めて気づきました。

承認とは? 「相手に表れている違いや変化、成長にいち早く気づき、それを言語化して伝えること」

今まで、無意識ではありましたが、「承認」する言葉がお客様のモチベーションに繋がる!と確信して声掛けを行ってきました。が、ある時、それが通じない場面に遭遇してしまったのです。

最近始めた高齢者対象の教室で、その教室の立ち上げの時にも「是非参加したい!」と積極的だったAさん。歩くのにも杖が必要で、片方の腕は上がらない状態でしたが、それでも「これ以上動けなくなったら困る!」と意欲的でした。

ところが、毎回レッスンの途中に「動かなくて辛い、できない」という表情をされ、終わった後も「できなくて・・」と辛そうに私に訴えてこられるのです。それに対して私は、いつものように励ますつもりで声をかけていました。

「できるところはしっかり動かれていますよ。」

「辛いなと思うところは休みながらゆっくり行ってくださいね。」

それでもAさんは納得いかない様子で、毎回「痛くて辛い、できない」と言ってこられます。何と答えて差し上げれば良いのか?私は悩み考えました。

今まで、できていること、一生懸命やろうとしていることを「承認」すれば、お客様は納得してやる気になってくれる・・そう思って声掛けをしてきましたが、それが通用しないことに気付かされたのです。

毎回、Aさんの様子を観察し、「痛くて辛い、できない」を聴いているうちに、ある時、ふっと思い当たりました。Aさんは励まして欲しいのではなく、「痛くて辛い、できない」状況を分かって欲しいだけなのかも?と。

ある日、いつものように辛さを訴えるAさんに言ってみました。

「痛くて動くのが辛いんですね。しんどいよね。」

するとどうでしょう、「そうなんです!」とほっとした表情になって帰って行かれました。

そして毎回そんな会話を続けていくうちに、気が付くと「辛くて・・」と言わなくなっていました。そればかりか、椅子に座るまで離せなかった杖を、教室の外に置いて入ってこられるようになったのです。

「痛くて辛い、できない」Aさんの状況を丸ごと認め引き受ける・・そんな私の言葉と態度がAさんの気持ちを変えたのだと思いました。

できていること(結果)、やろうとしていること(変化・行動)を承認することも大切ですが、それだけでは安心できない方もいる!! どんな状況でもその方そのものの「存在」を承認することこそ大事だと、改めて気付かされました。

コーチングの「承認」は英語の「アグノリッジメント(Acknowledgment)」を日本語に訳したものです。その「アクノリッジメント」には「そこに居ることに気づく」という意味もあるそうです。後でそのことを知り、「承認」とはそういうことなんだ!と腑に落ちた想いがしました。

教室に参加されるお客様から、よくこんなことを言われます。「先生は『できなくてもイイ、大丈夫ですよ!』って言ってくれるから、続けられるし楽しめる。」

どんな状態の方も、その方お一人お一人の存在を丸ごと受け入れる・・「承認」することで、これからもより多くの方々に「元気」を提供し続けたいと思っています。

コーチングプラットフォームでの学びが様々な気づきに繋がり、自信をもって仕事を楽しめている今の「私」がいます。

人生を、仕事を楽しみたい方、一緒に学んでみませんか?