コーチングプラットフォーム認定コーチの本間 季里(ほんま きり)です。
人は、同じ話を聞いても、すっと入ってくるときもあるし全く心に残らないときもあります。これをコーチングではレセプターという言葉を使って説明しています。
レセプター、すなわち受容体は、ある物質や刺激をキャッチすると、内側に信号を送ります。私達も同様で、ある話を聞いても全く響かないときもあるし、ものすごく刺さるときもあります。刺さるときはレセプターが開いているときで、響かないときはレセプターが出ていないか開いていないとき。
このことに関して、私には忘れられない出来事がありました。10数年ほどまえ、知人と話をしていたときのことです。職場の後輩の愚痴を言っていた私に、その知人は「あなたは後輩の領域に踏み込みすぎている。後輩の成長を考えるなら、後輩の領域と自分の領域の境界を意識すること、そして後輩の領域には踏み込まず、自分のすべきことに集中すること」とアドバイスしてくれました。私は心底びっくりして「なるほど!!自分の弱点がすごくよくわかった。今まで余計なことをして相手のやる気を削いでいたわけだし、自分もすべきことに割く時間とエネルギーを、後輩の領域を侵すことに使っていたわけなのね!」と叫びました(絶叫したわけではないけれど)。
そうしたら相手は笑いながら「あなたに届くのが今日だったのですね。実はこの3年間、時々この話はお伝えしていたんですよ。気がついていました?」と言われました。この言葉に私は再びびっくりしました。彼女は「誰でも話を聞けば、いつでもすっと頭に入ってくるというものではないですものね。引っかからないときもあれば、強く心に響くときもある。そして、いつ響くときが訪れるかは誰にもわからないから、時々水を向けては『今日もそのときじゃないんだな』とさっさと引っ込めていたんですよ」と言いました。まさにこの話に関して、私のレセプターが開いていたのがその日だったのです。
私自身がこのような強烈な体験をしているので、今の産業医という仕事の中でも気長に、大切なことは何度も何度も繰り返しお伝えするということを意識しています。そうするとやはり、今までは完全にスルーされていた話に「なるほど〜」と反応していただける時があり、「なんで今?」と思いながらも「レセプターが開いていたのね〜。良かった」と心のなかでガッツポースをしています。
そして、部下指導に苦労されている管理職の方たちにも、「その話が相手に刺さるのが一体いつなのか、人間には誰にもわからないことなので、お伝えする1回1回にあまりエネルギーを使いすぎず、むしろ軽い感じで繰り返し繰り返し語りかけてみてください。刺さる時が来たら、そのときにじっくりと話をするつもりで。」とお伝えもしています。