こんにちは。コーチングプラットフォーム認定コーチの神田尚子です。

「アサーション」、この言葉をお聴きになったことはありますか。
コミュニケーションスキルの1つで、「人は誰でも自分の意思や要求を表明する権利がある」との立場に基づく適切な自己表現のことです。

アサーションの発祥はアメリカで、1950年代に行動療法と呼ばれる心理療法の中から生まれました。当初は「アサーション=自己主張」として定義され、自己主張が苦手な人を対象としたカウンセリング技法として実施されていました。人間的な尊厳を取り戻し、回復を図る上で有効だったというわけです。また、「誰かを傷つけずに自己主張をする」というアサーションと行動は、「人権拡張」「差別撤廃」といった公民権運動と関わり合い、権利や言動を圧迫され続けていた人達に大きな勇気を与えたということです。

日本にはその後、1990年代に導入されました。現在でも多くの企業で「アサーティブ研修」が行われています。私が所属する組織でも、基本的なコミュニケーションスタイルとして、みんながアサーティブであることを目標としています。

「誰も傷つけないで自己主張する」というアサーションには、「誰も傷つけない」こと、「自己主張する」ことの2つの要素が入っています。時に、「意図せず」傷づけてしまうということ、また、「敢えて」自己主張しないことが、日本の組織においては多いことを感じています。結果、アサーティブになれない。私自身は、敢えて自己主張しない経験を2度しました。

ひとつは、学生の頃です。教授から一定期間無視されるということがありました。話しかけてもこちらの存在がまるでないかのような振舞いを突然されたり、指導時間になっても現れなかったり。私はただ、仲間の学生に泣きつきながら、途方に暮れていました。

二度目は、社会人になってからのこと。上司が日々、シャワーのようにネガティブフィードバックを送ってきました。会議の場でも集中攻撃が続きました。飛んでくる矢のことばかり考えて、仕事になりません。攻撃の根拠も目的もわかりません。そんな私を見かねた周囲のメンバーが「根拠なんてなにもない。あの人からは離れた方がいい」という言葉をかけてくれました。

いずれの場合も、私は自己主張できませんでした。「火に油」となることを恐れたからです。

ただ、できることがあるとすれば、「何を伝えることができれば、自分を見失わずに済むか」を問うことによって、手ごわい課題に向き合う時の「軸」を得ることにつながるのではないでしょうか。

「何が私を黙らせてしまうのか」

「どんな環境を手に入れようとしているのか」

「最終的に手に入れたいものは何か」・・・。

アサーションへの道は、自己への問いから始まります。 手ごわい課題が降ってきたとき、「問い」で逃げない自分が作れそうです。

参考文献 アサーションとは https://solution.lmi.ne.jp/column/8702  (2024-01-15