コーチングプラットフォーム認定コーチの本間 季里(ほんま きり)です。

「相手の話をまとめようとしなくても良いんじゃない?要約する癖があるよね。相手の言葉をそのまま拾うとか、ただ相手に話してもらうとか、いくつかやり方があっても良いと思うんだけど」

コーチングプラットフォームで勉強したあとの認定試験。大勢の人が見ている前で、クライアント役の先輩コーチを相手にコーチングのセッションを行い、フィードバックをもらいます。いくつかのフィードバックの一つが冒頭の言葉でした。

実はこの認定試験のセッションでは、クライアント役の先輩コーチのテンションが、セッションが進むにつれどんどん下がっていくのが手にとるようにわかりました。

この認定試験は3年も前の話なのですが、ここ一ヶ月ほどよく思い出します。私は冒頭のフィードバックの意味が実は全くわかっていませんでした。

というより、心の奥底でずっと「相手の話を要約しちゃ、いけないのかな?それのどこが悪いのかな」という一抹の疑問がありました。私たちはいつも話を要約することを求められることはあっても、要約するなと言われることはありません。相手の話をさっと「こういうことですね」と理解するチカラを褒められることはあっても「それ、止めてみたら?」と言われることもありません。

もっと言うと、最近まで「相手の悩みを相手の言葉そのままに受け止めてみたら?」というアドバイスに対しても「わかってる。私はそれをずっとやっている」と思っていました、心の底から。

しかし、認定試験から3年すぎてやっと気づきました。「相手の話を一旦、私の中に落とし込んで思考して、私が『クライアントの話はこういうことなんだな』と思考したことを、再び私の言葉で『こういうことですね』と相手に言っているんだ」ということです。

認定試験のセッションの中で「こんなことですか?」と【私が要約して質問、フィードバックをしても】、クライアント役の先輩コーチは「う〜ん、それとちょっと違う気がする」という言葉の応酬となりました。「わかってもらえていない」これが先輩コーチのテンションが下がっていった理由だったのです。

セッションでは言葉を介する以外の方法はありません。相手と自分ではたとえ同じ言葉を使っていようとも、その言葉の意味するところが微妙に違っています。「休み」という言葉から連想することは千差万別。「赤」という言葉からもイメージするものは人それぞれ異なります。

それが会話になると、その会話にでてくる文の意図・ニュアンスまで含めて、相手と同じ意味で受け取っていることは皆無でしょう。

そのままでも微妙に意味するところが違っているものなのに、さらに私の中に一旦落とし込んで「こういうことだな」と要約して、それを私の言葉で相手に返したら、何重にもちょっとしたズレが重なってしまいます。相手にとっては「わかってもらえてないなあ」ということになりかねません。

これが「話をまとめてしまうことによる自分の解釈」と、「相手が考えていること」のギャップだったんだ、ということなのでした。

この「う〜ん、それはちょっと違う気がする」「わかってもらえてないなあ」という感覚は私も日常的によく経験します。そうするとたしかに凄くテンションが下がってしまいますね。

要約することが必要なときもあるけれど、相手の話を聴くときには変に相手の話を要約して自分の言葉で「こういうことですね」と言ったりせずに、相手の言葉そのままに受け止めてみるということも大切なんだと気づきました。気づくまでに3年かかったけれど、それだけ人の話を聴くということは奥が深いことなのですね。

要約することで気づきが得られることもある。でも、要約せずに相手の言葉そのままに受け取ることで会話が加速する場合もある。自分の中に両方持っていること、そしてその場に応じて使い分けることができること。そんな方向を目指していこうと改めて感じました。